DGX Spark 2台で320BのAIが動く!TensorFold×GLM-5.3-Flashは使える?

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2つの抽象的な計算機が巨大なAIモデルを分担する様子を描いたAI生成の概念イラスト

どうも、ベア三郎です。

「18Bしか動かないなら、128GBのDGX Sparkでも余裕なのでは?」

ところが、そう簡単にはいきません。今回の主役は、全体では320Bという巨大なAIモデル。1台のメモリには収まりきらない相手に、複数台の小さなAIマシンが挑みます。しかも、公開された速度はなかなか刺激的。思わず「これは試してみたい!」と言いたくなる数字が並んでいます。

ただし、ここで早とちりは禁物。「動いた」と「安心して使える」は、まだ同じ意味ではありません。華やかなベンチマークの裏側にある条件まで、一緒にのぞいてみましょう。

2026年10月16日、推論エンジンTensorFoldが1.0.12を公開しました。目玉のひとつが、GLM-5.3-FlashをNVIDIAのDGX Spark(GB10)で動かす新しい経路です。ただ、大事な前提が先にあります。これはソースビルド前提のプレビューで、READMEの正式対応一覧(qualified platforms)にはGLMのCUDAはまだ載っていません。

メンテナー側も、2台GB10で先頭4層の配信とsynthetic(人工的な小規模テストモデル)検査にとどめ、チェックポイント全体の正確さと速度は自機では未検証だとPRコメントで明言しています。今回は「動いた!」で終わらせず、何が検証済みで何が未検証かを一次資料から読み解きます。

目次
ベア三郎
家電製品アドバイザー(総合)
家電製品アドバイザー(総合)の資格を持つベア三郎です。複数の国家・ベンダー系IT資格を保有しています。ガジェット・家電の選び方とテックニュースを、仕様や利用条件を確認しながらわかりやすく紹介します。

TensorFoldは何をする道具?既存エンジンとの関係

TensorFoldは、ローカルでLLMを動かす道具のひとつで、Apple SiliconのMetalとNVIDIAのCUDAでモデルを動かす推論エンジンです。現在はZigで書かれたネイティブバイナリで、インストール手順は公式runbookにあります。同じくローカルLLMを動かす道具として、llama.cpp(GGUF形式で幅広いハードで動く)やvLLM(サーバー/バッチ/分散に強い)が挙げられます。以前Qwenを単機で比べた記事では、Strataとllama.cppのGGUF変換や重み配置、MTP(Multi-Token Prediction、複数トークンの先読み)を扱いました(→Strata vs llama.cppの実測)。ただしStrataはあくまであのQwen単機の文脈での比較で、今回のGLM-5.3-Flashでの対応や性能順位は確認していません。どれが最強とは言い切れず、得意分野が違うだけです。

GLM-5.3-Flashは「18Bだけ載せる」では済まない

GLM-5.3-FlashはZ.aiのモデルで、総パラメータ320B、そのうち1トークンで実際に動くのが18BのMoE(Mixture of Experts)です。MoEは「専門家チーム」のようなもので、毎回すべての専門家を起こすわけではありません。とはいえ「18Bだけメモリに載せればよい」ではないのが落とし穴。たとえるなら、実際に仕事をするのは18人でも、控えている320人分の席は必要という話です。登場する専門家を毎回すべて計算するわけではなくても、その重みをどこに置くかという問題は消えません。ここで初めて、「1台で頑張る」から「複数台で分担する」という発想が効いてきます。単純に4bitで概算しても320B×0.5バイト=約160GBになり、DGX Spark単機の128GBを超えます(あくまで概算で実測値ではありません)。

NVFP4は「一律4bit」でも「全部FP4計算」でもない

ここで出てくるのがNVFP4です。4bitの浮動小数点にスケールを添えた形式で、モデル全体を一律4bitにするのではありません。NVIDIAのモデルカードがうたう約3.33倍はディスク容量とGPUメモリ(容量)の削減で、Blackwell向けです。ただし「形式を読み込める」と「Tensor Coreで全演算をFP4(W4A4)として実行する」は別物。PR804の実装はNVFP4の重みを読みつつattentionとKVキャッシュ(会話の中間データを保存する領域で、BF16/FP8はその保存精度)はBF16で動かす構成で、つまりNVFP4重みをBF16入力で計算するW4A16側に近く、名前のNVFP4だけから「全部FP4で計算」「BlackwellのFP4演算を全面活用」とは読みません。

TP(分割)は何台で何が報告されている?

TP(Tensor Parallelism)は、モデルの計算と重みを複数機に分担し、毎層通信する仕組みです。分担する1機ごとの処理単位をrank(ランク)と呼びます。今回のフルモデル経路で、何台で何が報告されているかを整理します(出典:PR804)。

台数 PR804の報告での状態
1台 このフルモデル経路の動作報告なし
2台 作者が全体を運用・検査
3台 PR804の報告ではエンジン検査のみ。サーバー起動はNCCL bootstrap未検証
4台 第三者がswitchless ringでgather指定し動作

ソース上の最大16rankを動作保証にはしません。3台は「PR804の報告では」の範囲です。なお別系列のNVFP4 BIZ 2.xでは3台の配信報告が別途あります(後述)。

PR804がやること・やらないこと

PR804は、ModelOptのNVFP4を再量子化せずに読むCUDA経路、NCCLによるTP、MTP(複数トークンを先読みし、本体が検算)、同時要求、全rankのメモリ最小余裕での受け入れ、プロンプト再利用などを含みます。モデルの画像・動画対応や1M文脈を、今回この経路で検証済みとはしません。また、旧Python 0.6.6のEXL3/DFlash2レシピとnative 1.0.12のNVFP4は別物で、古いレシピに「CUDA未対応」とあるのは対象世代の違いです。

作者の公開値(2台GB10)

以下はPR本文のReceiptで報告された値です。ただしTensorFoldの数値は正式リリースの1.0.12ではなく、1.0.10ベースのPRブランチ(commit 6380c8da)での測定です。環境は2台GB10(driver 580.178.04、CUDA 13.3、NCCL 2.30.7、Linux 7.0.0-1019-nvidiaでkho=off、RoCE経由)、NVFP4 revision 423acf37、context 40960、出力256、温度0、3回中央値。TensorFold側はprompt/decode行がparallel 2、比較のvLLMは0.28.1rc1.dev580(nightly 385dce36)でFP8 KV・MTP k=3(一度に先読みするトークン数)・CUDA graphsなし・1 sequenceのプロファイルです。TensorFoldはBF16 KV、vLLMはFP8 KVで、KV形式や測定プロファイル(parallel 2と1 sequence)が異なるため、エンジンだけの差ではありません。

設定 code(TPS) chat(TPS)
TensorFold MTPあり 33.48 27.88
TensorFold MTPなし 17.61 17.61
vLLM MTP k=3 33.93 24.97
vLLM MTPなし 14.16 14.18

MTPありだとcodeはTensorFoldがわずかに遅く、chatは約11.7%速い。つまり、「TensorFoldの圧勝!」ではありません。コード寄りのテストではvLLMがわずかに上、チャット寄りではTensorFoldが上という、なかなか面白い結果です。ただし、下に書く測定条件の違いもあるため、11.7%という差をそのまま「エンジンの実力差」と断定するのは禁物。数字を楽しみつつ、条件もセットで読むのがベア三郎流です。TPS=秒間トークンで、日本語文字数には換算しません。四同時の総量chat52.8/code68.0は単発とは別物です。出典:PR804。

応答の最初のトークンが届くまでのTTFT(秒、cold/中央値3、入力は目標トークン長)も報告されています。

入力(目標トークン長) 2,048 8,192 32,768
TensorFold(秒) 1.305 5.872 22.745
vLLM(秒) 1.465 6.649 28.138

32k入力は約23秒。長い資料を読ませた直後は、それだけ最初の文字を待つ計算です。出典:PR804。

第三者のTP4報告(4台GB10)

第三者SvangenStudios氏のPRコメントです。同じ6380c8daビルド・checkpoint 423acf37、4台GB10、CUDA13.0、switchless ring、全rankでTF_GLM_PREFILL_REDUCE=gather。測定は出力256・温度0・3回中央値です。別ホスト・別セッションなので、2台比の倍速や台数比例の結論は引けません。default splitは非隣接接続で失敗しました。

設定(TP4・gather) code(TPS) chat(TPS)
MTPあり 66.29 42.10
MTPなし 25.85 25.76

四同時の総量はcode130.5/chat85.9。TP4内部の一致で、TP2とのbit一致を証明したわけではありません。出典:PRコメント。

混ぜるな危険!前提が違う数字たち

NVIDIA Forumsのd.piwowar氏の測定は9/30時点の旧EXL3/TR3+DFlash2とsparkringの比較で、量子化も経路も違います。今回のNVFP4 PR804の表には混ぜません。速い数字には別の前提があります。

また、Bizuayeu氏の「NVFP4 BIZ 2.x」は別系列のPython TensorFold v0.6.5ベースのforkで、TP2/TP3のサーバー運用やFP8 KV、画像・長文の検収を別途報告しています。native ZigのPR804でTP3サーバーが未検証であることと矛盾せず、版と実装が違います。Bizuayeu氏はREADME.ja.mdで日本語でも発信しています。BIZの性能値を今回の表には混ぜません。

筆者の考察:速さより「待ち」と「運用性」

以前の記事で「最高TPSより、TTFTと共有時の待ちが快適さを決める」と書きました。今回も同じです。モデルの容量(メモリに載る量)と計算(毎トークン動かす量)を分けて考える。エンジンの競争も、NVFP4原本をどう扱うか、再現性、同時利用、分散の運用性まで比べる段階に入りました。

向くのは、複数台のGB10を検証できる人です。単機ユーザーは、いま急いで乗り換える必要はありません。「明日から快適に使える道具」を探している人と、「次の可能性を自分で切り開きたい人」では、選ぶべきものが違うからです。今回のニュースは、後者にはワクワクする挑戦状。でも前者にとっては、将来を占う興味深い途中経過として受け取るのがよさそうです。READMEの正式対応一覧にGLM CUDAが載るのを待つか、既存の安定経路を使い続けるのが無難です。

ベア三郎のひとこと。新経路の速さより、「いつ・何台で・何が検証されたか」の輪郭が、いまの段階ではいちばん参考になります。次に自分の用途で比べるなら、同じモデル・入力・MTP条件で、初動(TTFT)と完了までと同時利用を、まとめて測りたいです。

検証メモ:本記事は2026-10-17時点の公開資料に基づく解説で、筆者のDGX SparkでのGLM実測は含みません。数値は作者・第三者の報告値で、環境・KV形式・セッションが異なります。

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