ドイツ発の世界的オーディオ機器メーカーとして、国内でもファンが多いゼンハイザー。高品位なイヤホン・ヘッドホン・マイクで有名なブランドですが、2020年に同社初となるサウンドバー『AMBEO Soundbar』をリリースしています。
当時は約36万円という価格に驚きましたが、なにより合計13個ものスピーカーを搭載し、一台で5.1.4chを実現するウルトラスペックに衝撃を受けました。
あれから3年弱が経ったこの夏、ゼンハイザーより新たに『AMBEO Soundbar Plus』とワイヤレスサブウーファーの『AMBEO Sub』が発売されました。
AMBEO Soundbar Plusは、『AMBEO Soundbar | MAX』としてリブランドされた『AMBEO Soundbar』の姉妹品にあたり、サイズはもとより、価格もグッとスリムに。
ゼンハイザーファンのみならず、本格的なホームシアターシステムから乗り換えを考えている方も、どんな製品なのか気になっていると思います。
この記事では、年間数多くのサウンドバーをレビューしてきた筆者が、ゼンハイザーの最新サウンドバーAMBEO Soundbar Plusと、サブウーファーAMBEO Subを徹底チェック。2週間じっくり使ってみて分かったメリットとデメリットを余すことなくお伝えします。
購入を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください!
AMBEO Soundbar Plusの概要
1.世界初。サウンドバー単体で7.1.4chを実現
AMBEO Soundbar Plusは、2023年6月15日にゼンハイザーブランドとして発売されたサウンドバーです。9つのスピーカーを備え、同社がプロフェッショナルの放送現場で培った『AMBEO 3Dオーディオ技術』を組み合わせることで、世界初となるバー単体での『7.1.4ch』サラウンドを実現。
ドルビーアトモスやDTS:Xの他、MPEG-Hや360 Reality Audioなど、最新の3次元音響フォーマットにも対応しており、映画館クラスのイマーシヴサウンドを実現しています。
価格は約22万円(執筆時点)と、AMBEO Soundbar | MAXの約36万円に比べ、手に取りやすい価格となっています。これでもまだ高価と感じるかもしれませんが、本格的なサラウンドシステムの場合、取付工事の費用だけで10~20万円ほど掛かってしまうこともあり、ターゲット層を考えると妥当な価格設定と言えるでしょう。
AMBEO Soundbar | MAXとAMBEO Soundbar Plusは、機能面ではほとんど差は無く、この価格差は純粋にドライバー数の違いが大きいと見ています。
AMBEO Soundbar Plus | AMBEO Soundbar MAX | |
---|---|---|
アルミコーン・ツィーター | – | 3(フロント)・2(サイド) |
アルミコーン・フルレンジドライバー | 3(フロント)、2(サイド)、2(上方向) | 2(上方向) |
セルロース・ロングスローウーハー | 2(上方向) | 6(フロント) |
合計ユニット数 | 9 | 13 |
アンプ出力(RMS) | 400W(ハイエンドD級アンプ) | 250W(ハイエンドD級アンプ) |
事実、AMBEO Soundbar | MAXが13基のドライバーを搭載しているのに対し、AMBEO Soundbar Plusは9基と4基少ない構成です。
ドライバー数が減ることで、サラウンド感の減少が気になるところですが、そこは世界のゼンハイザーです。独自の『AMBEO 3Dオーディオ技術』と『セルフキャリブレーション機能』により、世界初となる一台で『7.1.4ch』を実現。チャンネル数だけを見ると、AMBEO Soundbar | MAXの『5.1.4ch』を上回っており、とても興味深いポイントだと思います。
(予算が許せば)AMBEO Soundbar | MAXを用意して、実際に聴き比べてみたいところです。
2.MAXとの決定的な差はドライバー数だけ?
ドライバー数だけがAMBEO Soundbar | MAXとの違いなのでしょうか。実は、仕様を詳しく見ていくと、低音の再生周波数の違いがあることに気が付きます。AMBEO Soundbar MAXは6個のロングスローウーファーを搭載し、30Hzまでの低音再生をサポートしているのに対し、AMBEO Soundbar Plusは2つのサブウーファーを搭載し、低音の再生周波数帯域は38Hzまでとなっています。
この数値は再生周波数帯域を公表しているサウンドバーの中でも、かなりの高スペックであり、大抵の人は、外付けのサブウーファー無しに満足できるはずです。
まさに、この8Hzの差を埋めるソリューションが、同時に発売されたAMBEO Subなのではないかと考えています。
AMBEO Subは、約20cmのロングスローウーファーと350WのクラスDアンプを備え、まさに轟音とも表現できる27Hzまでの再生周波数帯域をカバー。
こちらのサブウーファーも『AMBEO 3Dオーディオ技術』と『セルフキャリブレーション』が搭載されており、空間に応じた重低音が楽しめます。AMBEO Soundbar Plusとは、ワイヤレスで簡単に接続できるようになっている点も見逃せません。
AMBEO Soundbar | MAXを超える、まさにシアタークラスの重低音を味わいたい方は、ぜひ同時購入をオススメします。
3.ゼンハイザーらしいファブリックデザイン
AMBEO Soundbar Plusはハイエンドオーディオらしい魅力的なデザインも素敵です。
ゼンハイザーを代表するハイエンドオーディオ『MOMENTUM』シリーズを彷彿とさせる、ファブリックデザインがベースになっています。随所にハイエンドオーディオならでの風格が滲み出ており、スタイリッシュな佇まいがリビングを華やかなスペースに変えてくれます。
高級感あふれる外観はさることながら、AMBEO Soundbar | MAXに比べ、AMBEO Soundbar Plusは大幅なコンパクト化・軽量化が図られている点は見逃せません。MAXの厳ついデザインも嫌いではないですが、正直、日本のリビングにはデカすぎると思っていたので嬉しいポイントです。
AMBEO Soundbar | Plus | Max |
---|---|---|
横幅 | 105.1cm | 126cm |
高さ | 7.5cm | 13.5cm |
奥行き | 12.1cm | 17.1cm |
重さ | 約6.3kg | 約18.5kg |
こちらの表を見て分かる通り、AMBEO Soundbar Plusは、Ambeo Soundbar | Maxに比べてはるかにスリム。重さもわずか6.3kgと約1/3となり、扱いやすいサウンドバーになりました。
実際、AMBEO Soundbar Plusは、同クラスの他のサウンドバー(例えばSony HT-A7000やSonos Arc)と比べてもコンパクト。とはいえ、AMBEROの音響特性を犠牲にしないギリギリのサイズなのだと思います。
4.ルームキャリブレーション機能
AMBEO Soundbar | Plusは、各スピーカーからの出力を最適化するために、自動のルームキャリブレーション機能を備えています。本体にキャリブレーション用のマイクを4基搭載しており、Sennheiser Smart Controlアプリから操作するだけで、簡単にキャリブレーションしてくれます。
このルームキャリブレーション機能は、部屋の形状のみならず、家具やカーテンなどの材質も感知して音響特性を最適化してくれるそうです。
Ambeo Soundbar | Maxでは付属のキャリブレーション専用マイクを用いる形式でしたが、内蔵型マイクになったことで、より手軽にキャリブレーションできるようになったことも嬉しいポイントですね。
5.豊富なネットワーク接続機能
AMBEO Soundbar Plusは、BluetoothおよびWi-Fi経由で、簡単に各種音楽サービスやスマートホームと連携するために独自の『AMBEO | OS』なるものが搭載されています。
これにより、スマホやタブレットからChromecast built-in、Spotify Connect、TIDAL Connect、AirPlay 2などの音楽連携サービスを使って、サウンドバーをワイヤレススピーカー代わりに使うことできます。
ここまでハイエンドクラスのサウンドバーだと音質も最高だし、すぐにつながるのでめちゃくちゃ便利。
また、Google Home、Apple HomeKit、Amazon Alexaなどのスマートホームとも連携可能です。使いどころは悩むものの、声だけでサウンドバーを制御できるように。
6.シンプルながらも重厚感あふれるリモコン
写真では分かりにくいと思いますが、リモコンはかなり重厚感あるデザインになっています。実際に手に取るとずっしりとした重みも感じます。サウンドバーのリモコンは、ほぼ全ての製品でチープさを感じてしまうのですが、ゼンハイザーなりのこだわりを感じるリモコンです。各ボタンも実用的なサイズ感で押しやすいですね。
ハイエンドオーディオ機器を持つ所有欲は十分満たしてくれますが、バックライトが無いところと、ミュート機能が分かりにくい点だけは残念です。専用のミュートボタンはなく、代わりに「O」のマルチファンクションボタンで制御するのですが、電源ボタンと間違えやすいです(笑)。
なお、サウンドバーの操作は「Sennheiser Smart Control」というスマホアプリでも行えます。シンプルで直感的なインターフェースなので、リモコンよりもずっと便利に感じました。
AMBEO Soundbar Plusのサウンド
あまりのリアルさに脳がバグる。圧倒的な臨場感
先に結論からお伝えすると、『AMBEO Soundbar Plus』は、その高度な音響テクノロジーによって、家庭でのエンターテイメント体験が一新すると言っても過言ではないサウンド体験が得られます。
約2週間お借りして、映画・ドラマ・ニュース・アニメなど様々なジャンルをじっくりチェックしてみましたが、今回はApple TVのオリジナルドラマ「ハイジャック」からの感想をベースにサウンドをお伝えします。
このサウンドバーの真骨頂は、9基もの豊富なドライバーユニットと、AMBEO 3Dオーディオ技術が組み合わさった極上のサラウンドにありました。「AMBEO 3Dオーディオ」のオフ/オンによって、サラウンドの臨場感が全く異なるため、映画を見る際には必ずオンにしておくことをオススメします。
一般的なTVスピーカーでは、1つに混ざり合ってしまう音も、まさに圧倒的とも言える「音の分離感」によって、別次元の臨場感に包まれます。とくに音の定位や、音の輪郭が明瞭かつ自然に聴こえてくるため、まるでハイジャックされた機内にいるかのような錯覚に襲われるほどです。
音域についても、AMBEO Subから出力される重低音はかなりの迫力。サウンドバー単体でも十分すぎる重低音が出ますが、銃撃シーンでは、AMBEO Subから地鳴りのような重低音がしてとてもリアルでした。
中音域も太く、素晴らしい分離感でセリフもクリア。役者の息遣いまでも、その空気感が伝わってくるかのようです。高音域もナチュラルで1つ1つの音がハッキリと聴こえてきます。
一方、単体のサウンドバーとしては最高峰とは思うものの、バーチャルサラウンド技術が物理的に構成したホームシアターシステムを上回ることは難しいという点もお伝えしておきます。
AMBEO Soundbar Plusは、高さ方向と左右に関しては相当高いレベルで再現してくれていますが、後ろから聴こえる感覚には至りません。本格的なホームシアターシステムからの乗り換えを検討されている方は、この点にどう折り合いをつけるか、考えるべきでしょう。
サウンドバーとしては、まさに最高峰のサウンド!!
まとめ:ちょっぴり高価だが、実力は本物。本格シアターシステムからの乗り換えも十分視野に入るハイクラスサウンドバー!
ゼンハイザーのAMBEO Soundbar Plusは、その高度なサウンドテクノロジーとコンパクトなデザイン、豊富なワイヤレス接続とスマートホーム対応、そしてサブウーファーとの組み合わせにより、まさにエンターテイメント体験を一新するといっても過言では無いサウンドバーです。
高さ方向や左右におけるサラウンドの臨場感は、他に類を見ないレベルの完成度を誇ります。特に、本格的なシアターシステムからの乗り換えを検討されている方にとっても、先に述べたリア部分の懸念点を除けば、現時点で最高の選択肢の1つと言えます。
それでも他の人気メーカーが誇るハイエンドモデルは15万円程度であり、価格差は気になるところです。例えば、『SONOS ARC』や『SONY HT-A7000』、『JBL BAR1000』などは機能的には遜色ないレベルでありながら、比較すると手頃な値段です。
とはいえ、AMBEO Soundbar Plusは現時点で最高のサウンドバーであることに変わりはないため、音質に妥協したくないユーザーは迷う必要はないでしょう。
以上、ベア三郎でした!
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