周囲の雑音を低減することで、静かに音楽が楽しめるノイズキャンセリング・イヤホン。数年前に比べると、安価なモデルでもノイキャン搭載が当たり前になってきました。
一方、通販サイトの評価を鵜吞みにしてしまい、買って後悔したという声もよく耳にします。僕も年間多くのイヤホンレビューを通じて、安かろう悪かろうという製品を数多く見てきました。
そんな中、この春に登場した『SONY WF-C700N』は、手頃な価格でありながら、SONYの音響技術が詰まった魅力的なイヤホンとして人気を集めています。
とは言え、売れ筋の上位モデルであるWF-1000XM4やLinkBuds Sと比較し、SONY WF-C700Nがどこまで迫っているのか、気になるところだと思います。
そこでこの記事では、実際に購入して使ってみた感想をベースに、SONY WF-C700Nの使用感を徹底レビュー。忖度なく評価しているので、購入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
SONY WF-C700Nの概要
SONY WF-C700Nは、2023年4月21日に、SONYから発売されたノイズキャンセリング機能付きの完全ワイヤレスイヤホンです。
価格は執筆時点で約15,000円前後。少々お高いですが、SONYのノイズキャンセリング機能を搭載したイヤホン中では、エントリーモデルという位置付けです。
カラーは、トレンドのくすみカラーを採用したというラベンダー、セージグリーン 、ホワイト、ブラックの4種類。エレガントかつ落ち着いた色合いで、男女問わず幅広い層がターゲットであることが伺えます。
ソニーのスマートフォンXperia 10 Vと同じカラバリとのこと。
僕がとくに気に入っているのが質感です。例えるなら、まるで陶器のような手触りで少しザラっとしているのですが、手に馴染みやすく、非常に扱いやすいです。プラスチック感を感じさせないマットな質感であるため、品のある見た目に仕上がっています。
徹底的に無駄を省いた小型・軽量設計で、着け心地がよく、持ち運びやすいです。重量はイヤホン本体(片耳)が約4.6g、ケースは約31gと非常に軽いです。とくにケースは、いま売られている完全ワイヤレスイヤホンの中でも屈指のコンパクトさを誇ります。
操作はボタン式となっており、左右のイヤホンのハウジング部分を押すことで、様々な操作が行えるようになっています。
タッチ式でもそうですが、SONYのイヤホンは認識範囲が割と広いので、僕は着け外しの際に誤ってボタンを押してしまうことが何度かありました。ここは慣れや個人差があると思います。
質感や見た目はメチャクチャ好みです♪
また、この夏にアップデートでマルチポイントにも対応。マルチポイントとは、同時に複数のデバイスと接続することができる機能です。
例えば、パソコンで音楽を聞いている最中にスマホに電話が掛かってきても大丈夫。すぐに電話に切り替えることができます。
僕はイヤホンを着けたままスマホとタブレットを切り替えることが多いので、マルチポイントは欠かせない機能です。
これも大抵のエントリークラスには搭載されていない機能です。この価格でもSONYはしっかり対応してくれています。
SONY WF-C700Nの特長
フィードフォワード式ながら十分なノイズキャンセリング
2021年に発売されたWF-1000XM4は、現時点でもトップクラスのノイズキャンセリング性能を誇ります。そんなSONYの技術が詰まったSONY WF-C700Nのノイズキャンセリングはどうでしょうか。
SONY WF-C700Nは、左右に搭載したマイクで収音したノイズを分析し、雑音を打ち消すフィードフォワード式のようです。
ちなみにWF-1000XM4とLinkBuds Sは、内側のノイズも除去してくれる「デュアルノイズセンサーテクノロジー(ハイブリッド式)」が採用されています。
実際に試してみると、フィードフォワード式としては十分な実力です。
街中の雑踏や、車の騒音がある程度カットされ、静かなピアノ曲でも十分楽しめます。ノイズキャンセリングによる音質劣化もほとんど無く、閉塞感もありません。
ノイズキャンセリング技術を得意とするSONYの強みがしっかり表れています。
またWF-1000XM4とLinkBuds Sと同様に、耳にしっかりフィットする人間工学に基づいたデザインのため、耳栓のような役割も果たします。さらに遮音性を高めたい方は、自分の耳に合ったイヤーピースを選んだり、遮音性が高い材質のイヤーピースに交換してみるのもオススメ。
上位モデルと比べるとかなり善戦していますが、フィードフォワード式には限界があります。例えば、カナル型イヤホン特有のイヤーピースが擦れて出る「ゴゴ…」という音は打ち消すことができません。
SONYらしいイヤーピースの工夫もあって、擦れる音はかなり低減されているものの、ノイズキャンセリング機能を優先したい人は、WF-1000XM4とLinkBuds Sをオススメします。
一方、外音取り込みはWF-1000XM4やLinkBuds Sとそこまで大差なく、自然に近い音が再現されていました。また、専用スマートフォンアプリ『Headphones』を使うことで、外音取り込みのレベル調整や、人の声だけパススルーさせる『ボイスフォーカス』が使えるのも嬉しいポイントです。
上位モデルで培った技術が、随所に見られるのもSONYブランドの魅力!!
ハイエンドモデルに迫る音質
さて、肝心の音質はどうでしょうか。今回もいろいろなジャンルで時間を掛け、音質をチェックしました。
どこまでも透明
まずはクラシックから。江﨑文武初のソロアルバム『はじまりの夜』から『夜想』を聴いてみます。静かで落ち着いたピアノからはじまるのですが、音がいいイヤホンはこの段階で違いがでます。透き通るような明瞭なサウンドで、エントリーモデルとは思えない音質です。低い音から、高い音までピアノの美しい音色を損なうことなく再生してくれます。
艶やかで美しいボーカル
ボーカルが華やかなJ-POPもチェックしておきましょう。これには大ヒット中のYOASOBI『アイドル』が適しています。つぶやくような声から、ハイトーンなファルセットボイス、シャウトまでまさに全部入り。結論として、そのすべてが聴きやすいです。音数の多い楽曲で、粗悪なイヤホンではつぶれてしまうような音も、しっかり聴こえる圧倒的な分離感。
派手さはありませんが、ワイヤレスであることを忘れさせてくれるイヤホンです。
サブベースもちゃんと出る
もうここまでくると、太鼓判を押すしかない完成度ですが、低音の再現度も確認しておきたいところ。ハックジョンソンがレゲエ(dub)をベースに、これまでの代表曲をリミックスした意欲作『In Between Dub』より『Wasting Time』を聴いてみました。dubなので、曲全体がサブベースを要とする構成です。さすがにエントリーモデルではつぶれちゃうかなと思いましたが、震えるようなサブベースの空気感まで見事に再現されています。これは素直にスゴイ。
音質については、ハイエンドモデルと遜色ないレベルに達していると言えます。ただ、ハイレゾ音源には対応していないこともあり、細部まで聴き比べると差は出ます。特にLDAC対応スマホを持っている方は、わざわざSONY WF-C700Nを選ぶ必要はないかと思います。iPhoneで聴く方については、同じAACコーデックで再生されますので、これ以上こだわっても仕方がないレベルだと思われます。
まとめ:うまく機能を絞って低価格を実現した完成度の高いノイキャン対応のエントリーモデル
まとめると、WF-1000XM4やLinkBuds Sとの差別化を図りながらも、価格以上の魅力を感じる良コスパモデルと言えます。
メリット | デメリット |
---|---|
エントリーモデルとは思えない高い音質 マルチポイントを始めとする上位モデル並みの機能 軽量・コンパクト設計 | 上位モデルと比較すると控え目なノイズキャンセリング性能 |
メリット・デメリットを見てみると、まず音質については文句なしの出来栄えです。上位モデルで培った音響技術が随所に見られ、ハイレゾ未満の音源において大きな差があるとは思えません。一方、ノイズキャンセリング機能についてはハイブリッド式ではないため、上位モデルとハッキリ差が出ているところです。とはいえ、ノイキャンが得意なSONYですから、そこら辺の中華製イヤホンとは比べ物にならない完成度を誇ります。
また、夏にはマルチポイント対応が予定されており、DSEEやボイスフォーカス、アダプティブサウンドコントロールなど、上位モデルで人気の機能もしっかり搭載されています。
価格が近いLinkBuds Sを除き、1万円前半のライバルになりそうなイヤホンは、Jabra Elite4、Victor HA-FX150T、Anker Soundcore Liberty 4あたりでしょうか。どれも優秀なイヤホンですが、SONY好きなら、SONY WF-C700N一択でしょう。少し癖のある音質ですが、ノイキャン性能を求めるならAnkerもオススメです。
以上、ベア三郎でした!
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